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Fundació Joan Miró(ジョアン・ミロ美術館)
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Barcelona, Section 5 (Figueres – Barcelona)

Fundació Joan Miró(ジョアン・ミロ美術館)

都市と自然が交差するモンジュイックでミロの世界を旅することができる美術館

バルセロナ中心部から車でおよそ15分。モンジュイックの丘の上に建つ白い建物が、ジョアン・ミロ美術館(Fundació Joan Miró)です。カタルーニャ出身の20世紀を代表する芸術家、ジョアン・ミロが「自らの作品を故郷に還元したい」という思いから1975年に設立した美術館で、現在ではバルセロナを象徴する文化拠点のひとつとして知られています。収蔵作品の多くはミロ本人や家族から寄贈されたもので、アトリエから直接運ばれた作品も少なくありません。

館内には絵画、彫刻、ドローイング、タペストリーなど多彩な作品が並び、初期から晩年までの表現が時系列ではなく自由に配置されています。訪れる人は決められた順路に沿うのではなく、自分の感性のままに空間を歩き、偶然の出会いを楽しむことができます。この展示構成は、ミロが生涯追い求めた「自由な創造の精神」を体感できるよう意図されたものです。

館内では、若き日に描いたカタルーニャの風景画から、超現実主義の影響を受けた1920年代の作品、そして第二次世界大戦中に南フランスで制作された「コンステレーション(星座)シリーズ」まで、ミロの象徴的なモチーフと詩的な世界をたどることができます。晩年の大作には、自然との対話や自由、平和への願いが込められており、1970年代に完成した大規模タペストリーやブロンズ彫刻がその精神を象徴しています。

この美術館の建築を手がけたのは、ミロの親友であり建築家のジョゼップ・リュイス・セルトです。スペイン内戦期には共和派として活動し、戦後はアメリカへと亡命。ハーバード大学建築学部長を務めていた彼は、亡命先からミロと書簡を交わしながら、美術館の構想を少しずつ形にしていったといいます。二人を結んだのは、芸術を通じて「自由」を取り戻すという信念でした。直線と曲線、光と影が絶妙に調和するセルトの設計は、歩くたびに新しい風景が現れる“旅する建築”と呼ばれています。白を基調とした館内に差し込む自然光が作品を柔らかく包み込み、窓の向こうにはバルセロナの街並みと地中海が広がります。天窓や中庭を通して光と風が流れるように設計された空間には、ミロが愛したカタルーニャの地中海的な光と素材が息づいています。

この丘の美術館は、単なる展示空間ではありません。ミロはこの財団に、若手アーティストを支援する場としての役割も託しました。その思いは今も受け継がれ、美術館の一角には現代作家によるインスタレーションや映像作品を紹介するスペースが設けられています。研究機関としての機能も持ち、所蔵点数は1万点を超えます。国内外の研究者や学生に開かれた「生きた美術館」として、今日も新しい芸術の芽を育んでいます。

ミロの自由な精神と、バルセロナの街と自然が交差するモンジュイックの丘の美術館を訪れれば、カタルーニャ出身の芸術家が生涯追い求めた「創造の自由」とは何かを感じ取ることができるでしょう。開館時間は火曜日から日曜日の10時から19時まで(夏期は20時まで)です。

Location / Address

Fundació Joan Miró
Parc de Montjuïc, s/n 08038 Barcelona (Barcelonès)
Official Web Site: Fundació Joan Miró

photo:©plusroadtrip ©Fundació Joan MIró