気候変動に備える持続可能なワインづくりと時代のニーズに応えるワイン文化を創出
カタルーニャを代表するワイナリー、ファミリア・トーレス(Família Torres)は、1870年にミゲル・トーレス家によって創業されて以来、150年以上にわたる歴史を築いてきました。現在ではスペイン国内に4つの拠点を持ち、チリやカリフォルニアにも畑を展開する国際的ワイナリーとして知られています。世界的に知られるワイナリーとなったいまでも、それでも根幹にあるのは、家族経営によって代々受け継がれてきた「土地の個性を最大限に表現する」という揺るぎない哲学です。



その理念の中心にあるのが「自然と共にある」という姿勢です。敷地に並ぶソーラーパネル、構内を静かに行き交う電気自動車、生産工程でのリサイクルガラスの積極利用、輸送負荷を減らす軽量ボトルの採用など、環境負荷削減の取り組みは日常の業務として徹底されています。オーナーのミゲル・A・トーレス氏はその取り組みが国際的に評価され、TIME誌の「気候変動に影響を与えた世界のリーダー100人」にも選出されています。ここでは流行的な環境配慮ではなく、未来の世代へ土地を受け継ぐための実践が着実に行われています。

この姿勢は畑づくりにも反映されています。19世紀末のフィロキセラ禍で多くの地域がフランス系品種に植え替えた中、トーレスは近年、忘れられつつあったカタルーニャ固有の土着品種を復活させるプロジェクトを開始しました。大学と協力しながら古文献を紐解き、耕作跡を調査し、分析した品種を自社畑で再び栽培。乾燥や高温に強い可能性を持つ品種を探ることで、気候変動時代のワインづくりに備える実験が進められています。


伝統を守りながら、新しい需要に応える柔軟さもトーレスの魅力です。その象徴がノンアルコールワインの開発で、既存のワインからアルコールだけを除去する独自技術によって、香りや風味を損なわない0.0%ワインを実現しています。併設レストラン「El Celleret」では地元食材を使った料理と合わせて楽しめ、ドライバーでも安心してカタルーニャのワイン文化に触れることができます。
敷地内にはトーレス家の歩みを伝えるミュージアムやセラーがあり、歴史的な建物の中に最新設備が共存しています。周囲にはプリオラートやペネデスのブドウ畑が広がり、遠くにはモンセラットの山並みを望むことができます。自然と人の営みが織り成すこの風景そのものが、トーレスの理念「自然と共にある」を語っています。


時代のニーズに応えながらも本質を見失わない姿勢、地域文化を大切にしながら世界へ発信する視野。ファミリア・トーレスを訪れれば、そのどちらも肌で感じることができるでしょう。サステナビリティと革新性を両立させるその姿は、未来のワイン文化を切り拓いていくワイナリーの象徴といえるものです。
Location / Address
08796 Pacs del Penedès (Alt Penedès), Barcelona
photo: ©plusroadtrip ©Catalunya
