奇岩に抱かれたカタルーニャの聖地
バルセロナの北西に広がるモンセラット山塊は、奇岩が林立する特異な地形で知られ、古代から人々の信仰を集めてきました。その中心に建つサンタ・マリア・デ・モンセラット修道院は、今日に至るまでカタルーニャの精神的象徴として存在しています。標高約1,200mの山岳地帯にありながら、市内から車で1時間ほどとアクセスが良いため日帰りで訪れる人も多い場所ですが、歴史や文化を知るほどに一日では足りない奥深さがあることに気づかされます。
この修道院の起源は9世紀にまで遡ります。最初は小さな礼拝堂から始まり、11世紀になりベネディクト会によって本格的な修道院が築かれると、巡礼の聖地としての地位を確立。中世には学問や芸術の拠点としても栄えました。しかしナポレオン戦争で破壊され、19世紀に再建されるという、破壊と復興を繰り返しながらも守られてきた背景には、この地を「カタルーニャの魂」とする人々の強い思いがありました。
巡礼者の目的の中心は「黒いマリア像(ラ・モレネータ)」です。12世紀頃の木像で、酸化により黒く変色した姿は神秘的な存在感を放ちます。カタルーニャの人々にとっては単なる聖母像を超え、民族的アイデンティティの象徴でもありました。独裁政権下でも巡礼は絶えることなく、今日も長い列ができる姿に信仰の厚さを感じることができます。



修道院は宗教施設であると同時に芸術と音楽の拠点でもあります。少年合唱団「エスコラニア・デ・モンセラット」は13世紀から続くヨーロッパ最古級の聖歌隊で訪れる者に深い感動を与えています。また博物館にはエル・グレコ、ピカソ、ダリといった巨匠の作品も収蔵され、山岳の聖地で名画に出会える意外性も魅力のひとつになっています。
周辺施設も充実しており、エスパイ・オーディオビジュアル・デ・モンセラットでは山の成り立ちや修道士の生活を映像で学ぶことができます。また、登山鉄道やロープウェイを利用すれば、断崖の間を走る列車や空中からの眺望を楽しむことができ、修道院と山岳景観の両方を味わうことができます。
クルマで訪れる場合、バルセロナから約55km/1時間30分程度です。山上には有料駐車場が整備されており、修道院の近くまで直接乗り入れることも可能。また麓のモニストロル・デ・モンセラット駅に駐車して登山鉄道やロープウェイで向かう方法も人気で、風景を楽しみたい人はこちらを選ぶのも良いでしょう。なお、混雑を避けるには早めの到着がおすすめで、午前中は黒いマリア像の拝観もスムーズです。
Location / Address
08199 Monistrol de Montserrat (Bages), Barcelona
photo:©Catalan Tourist Board ©plusroadtrip