18世紀マシア建築で味わうタラゴナの郷土料理
タラゴナ県の内陸部、ゆるやかな丘陵と畑が続く田園地帯に佇むマシア・フォンツカルデス(Restaurant Masia Fontscaldes)は、18世紀の農園邸宅を改装したレストランです。伝統的な石造りのマシア建築を生かした空間は、どこか懐かしさを感じさせる温かみがあり、旅の途中でふらりと立ち寄りたくなる落ち着いた雰囲気に包まれています。

このレストランが特に評価されているのは、土地の味を素直に引き出す料理。地元の野菜や肉、近郊の丘で育つブドウからつくられたワインなど、素材の多くがタラゴナ県内で収穫されたものばかり。豊かな地産地消の文化がそのまま皿のうえに表れており、観光地化されすぎていない“素朴な良さ”を感じられるのが魅力です。シンプルな調理でありながら味わい深いメニューが多く、旅の間の食事に落ち着きを取り戻すような時間を与えてくれます。


なかでもこの地域を象徴するのが「カルソッツ(calçots)」です。冬から初春にかけて楽しむタラゴナ県の名物で、長ネギの一種を直火で黒く焼き、外皮をむいて内側だけを甘く柔らかい状態で食べます。ロメスコ・ソースにつけて頬張ると、香ばしさと甘みが一体となり、郷土料理の素朴な力強さを感じられます。19世紀末、農夫が収穫したネギを火にくべたのが起源といわれ、やがて家庭や祭りの行事として広く定着したこの地域ならではの食文化です。現在では「カルソターダ」と呼ばれる季節行事として親しまれ、地域の風物詩にもなっています。

マシア・フォンツカルデスでは、このカルソッツと地元ワインのペアリングをはじめ、タラゴナの食文化を象徴するメニューを丁寧に仕上げて提供しています。手で豪快に食べるカルソッツは、日本ではなかなか味わえないローカル体験で、ロードトリップの途中に組み込めば、土地との距離が一気に縮まる“記憶に残る寄り道”になるはずです。


タラゴナの市街から車で約25分というアクセスの良さも魅力。古代ローマ遺跡を巡る観光と組み合わせたり、ペネデス地方やポブレー修道院へ向かう途中のランチスポットとして訪れたりと、ロードトリップの動線に自然に組み込める立地にあるのも魅力的です。
旅の合間に土地の味覚にじっくり向き合いたいとき、マシア・フォンツカルデスはぴったりの一軒です。季節の食材、伝統の調理法、歴史ある建物、そのすべてがタラゴナの“日常の豊かさ”を教えてくれます。
Location / Address
43813 Valls (Alt Camp), Tarragona
photo: ©plusroadtrip ©Catalunya
