真紅の外壁、巨大な卵、金色のフィギュア、屋根に浮かぶガラスドームなど、フィゲレスの中心に立つダリ劇場美術館(Teatre-Museu Dalí)は、建物そのものがサルバドール・ダリの世界観を体現した巨大なアート作品です。ダリ自身が「自分の作品を展示するならここしかない」と語り、1974年に完成したこの場所は、彼の生涯最後のプロジェクトであり、最も大規模な作品です。
もとは市立劇場だった建物をダリが全面的に改装したもので、展示の構成や空間演出はすべて彼の意図に基づいて設計されています。単に作品を並べるのではなく、美術館全体を一つのインスタレーションとして成立させているため、訪れる人は“鑑賞”ではなく“体験”の中へ自然に引き込まれていきます。

館内に決まった順路はなく、中央のガラスドーム、視覚トリックを用いたオブジェ、天井画など、至るところにダリらしい仕掛けが施されています。代表的な「メイ・ウエストの顔の部屋」では、ソファや暖炉などの家具が、特定の位置に立った瞬間に女優メイ・ウエストの顔として立ち上がるよう設計されており、芸術と演出の境界が曖昧になるような世界に誘います。



さらに地下にはダリ本人の墓が置かれ、建物そのものに“生涯と死、そして創作の継続”が結びついています。美術館は彼の人生の終着点であると同時に、今なおダリが訪問者を迎え続ける場所でもあります。
展示は初期の写実的作品から、幻想的な絵画、彫刻、舞台装置、ジュエリーデザインまで幅広く、ダリの多面的な才能に一度で出会える貴重な空間になっています。驚きや戸惑い、思わず笑ってしまう瞬間まで、あらゆる感情がこの美術館の仕掛けの一部となり、訪れる人の記憶に強い印象を与えています。
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photo: ©plusroadtrip
